『グリム童話』の魔女の地

 

 『グリム童話』は全部で210話あります。その中で魔女が出てくる話は20話です。そのうち「魔女みたい」と比喩で使われているのと、「魔女だと思った」と推量しているだけのを除くと18人。その18人のうち、「魔女に魔法をかけられた」というセリフにだけ出てくる魔女が3人。そうすると、『グリム童話』に姿をみせて 実際に行動する魔女は15人です。彼女たちは果たしてどんなことをしたのでしょう。この15人の魔女の出てくる話をリストアップしました。

 詳しい内容については『グリム童話の魔女たち』 また、グリム童話の跡を辿った『ドイツメルヘン街道夢街道』にも詳しい内容と行きかたを示した地図が載っているので、ぜひ読んでください。

 

 1.「小さな兄と妹」

 

 2.「ふたり兄弟」


 3.「黄金の子ども」

 

 4.「藪の中の婆さん」


 5.「森の家」


 6.「トルーデさん」


 7.「六羽の白鳥」


 8.「白い嫁と黒い嫁」


 9.「恋人ローラント」


10.「みつけ鳥」 

 「みつけ鳥」の魔女の場合はなんとも気の毒です。

 彼女はレーンちゃんという女の子の家の料理女です。ある日、せっせと水はこびをしていると、レーンちゃんがやってきて、「どうしてそんなにお水がいるの?」と聞くのです。それで、「誰にも言わなきゃ教えてあげる。あした、お湯が沸いたら、みつけ鳥(男の子の名前)を入れて、釜茹でにしちゃうのさ」とからかいます。

 でも、レーンちゃんは本気にして、「これは大変」とばかりに、みつけ鳥と一緒に逃げ出します。料理女は、二人が逃げ出したのを知って、そんなことがご主人様に知られたら大変なことになると思い、二人のあとを追います。会えば、「あれはほんの冗談さ」と言うつもりでした。

 ところが二人は次々と変身の術を使って逃げまくります。彼女は疲れ果てて、喉が渇き、みつけ鳥が変身した池の水を飲もうとします。すると鴨に変身したレーンちゃんがやってきて、彼女を池の中にひきずりこんでしまいます。それで、かわいそうな料理女は溺れ死んでしまいました。

 この女は魔女だと言われながら、魔法ひとつ使うことなく、子ども達にふりまわせれたあげく、溺死させられてしまうのです。

 

 げに恐ろしきは軽口と子どもの思いこみ

 

11.「ヘンゼルとグレーテル」

 

12.「青いあかり」 
 森で道に迷った兵隊が魔女の家とは知らずに、一夜の宿を乞う。魔女は仕事をしてくれるなら泊めてあげようと約束する。兵士は言われたとおり働く。三日目に井戸のなかに落ちている青いランプを拾うように言われる。

  彼は井戸の底に下りていって、燃えているランプを手にいれるが、これを渡せば井戸に置き去りにされると思って渡さなかった。怒った魔女は、兵隊を井戸の底に突き落としてしまう。

  だが、この青いランプはアラジンの魔法のランプと同じ力をもっていた。彼はその力を偶然に知り、井戸から脱出できる。しかも、このランプのおかげでお姫さまを手に入れて、王さまにまで出世する。

  この魔女が兵士の危惧したとおり、最初から兵士を井戸の底に突き落とすつもりだったかどうかはわからない。彼がそう思いこんだだけかもしれない。彼は自らの被害妄想によって窮地のたたされたともいえる。それでもこのランプのおかげで最後は幸せになったのだから、魔女に礼の一つも言っていい。なのに、彼は魔女を捕まえて裁判官に引き渡すようランプの精に命じている。 

  魔女がいったいどんな罪を犯したというのだろう。一宿一飯の礼に命をかける人だっているのに、彼は魔女の宝を取り上げ、あげくに密告だ。ランプの精は兵士にこう報告する。「魔女はもう首吊り台にぶらさがっていますよ」と。

 

 魔女は短気の罪か、信用をえられなかった罪をおかしたとしか言いようがない。

 

 13.「キャベツろば」

 

 14.「太鼓うち」

 

 15.「なぞ」

 

 

推測・比喩として用いられている魔女

 「ブレーメンの音楽隊」

 「千匹皮」

 「泉のそばのガチョウ番の女」

 

 

姿見せない言葉だけの魔女

 「蛙の王様」

 「鉄のストーブ」