『魔女街道の旅』
西村佑子著 山と渓谷社 2021年 本体1500円+税
〈お詫びと訂正〉本書『魔女街道の旅』P10-11にてレイアウトにズレが生じた箇所がございました。お詫びして訂正させていただきます。
西村佑子著 山と渓谷社 2004年 本体1,500円+税
〔はじめに〕より抜粋
ドイツの森に入ると、「魔女」が摘んだと言われる薬草がそこかしこに生えている。そして、いましも、薬草籠を手にした「魔女」たちに会えそうな気がする。
その籠にはたくさんの薬草が入っている。一瞬にして命を奪うほどの猛毒を含む薬草、かつて魔女が空を飛ぶときに身体に塗ったという「魔女の軟膏」の材料となった薬草、凶作や疫病を魔女のせいにして、それからを逃れるために使われた「魔除け草」など、魔女と縁の深い薬草が入っている。・・・
第1章魔女と薬草
1 空飛ぶ軟膏
2 魔女の軟膏
レシピ1 ヒヨス/ドクニンジン/ドクムギ/トリカブト
レシピ2 アサ/ケシ/ベラドンナ/チョウセンアサガオ
レシピ3 イヌホオズキ/エニシダ/イヌサフラン/トウダイグサ/
ヘレボルス/ゴマノハグサ/レタスとスベリヒュ
第2章魔女と魔除け
1 魔除け草
ハナハッカとニガハッカ/カノコソウ/オトギリソウ/イラクサ/ハシバミ/ヤドリギ
2 薬草を摘む曜日
キクニガナ/ヒメハナワラビ/クマツヅラ/セイヨウアマアイ/
ヤネバンダイソウ/シダ
第3章魔法の薬草
1 薬草の魔力
マンドラゴラ/ウイキョウ/モーリュ/魔法の杖
2 媚薬
相思相愛の薬・トリスタンとイゾルデ
恋をつなぎとめる薬・魔法の薬草を煎じる話
惚れ薬・夏の夜の夢
若返りの薬・ファウスト
愛の魔法
第4章「賢い女」の薬草
1 「賢い女」と魔女
2 聖母マリアと薬草
セイヨウハゴロモグサ
3 アルテミスとヨモギ
ヨモギ/ニンジンボク
4 ヒルデガルト・フォン・ビンゲンと薬草
5 薬草魔女
セイヨウノコギリソウ
6 性的癒しの薬草
ヘンルーダ/イノンド/ワイルドレタス
7 「賢い女」の薬草料理
聖木曜日の緑野菜 コバノカキドオシ
マイボーレ クルマバソウ
あとがき 引用および参考とした文献・図版一覧
西村佑子著 洋泉社 2004年(4刷)本体1905円+税
第1部『グリム童話』の魔女
『グリム童話』の魔女たちはけっして恐ろしくないし、一般に思われているような残酷なことなどしていません。そもそも彼女たちを魔女という名で一括りするのがまちがっているのです。魔女はひたすら王子さまを待つお姫さまと違い、実に個性的です。そんな『グリム童話』の魔女たちが紹介されています。
第1章 魔女の履歴書
魔女は女魔法使いと同じか
魔女は何人いるか
第2章 どんな魔女だったか
魔女は魔法の名人か
魔女がいるわけ
殺人と殺人未遂で検挙された魔女
軽犯罪もしくはモラルに反した罪で殺された魔女
魔女の最期
第3章「ヘンゼルとグレーテル」の魔女
魔女のいない「ヘンゼルとグレーテル」なんて
森に住む魔女
第4章 魔女の親戚
パトロン魔女 「いばら姫」と魔女産婆
「ラプンツェル」の女魔法使いは名づけ親
第2部 伝説の魔女
ドイツには魔女を主人公にした伝説がたくさんあります。それは、ヨーロッパに脈々と流れてきた魔女迫害の歴史から生まれたものです。第2部では、魔女のルーツを探り、ドイツの魔女伝説を読み解いていきます。
また、ゲーテの『ファウスト』で世界的に知られるようになった魔女伝説「ヴァルプルギスの夜」について、その歴史的な背景が語られ、今も行われている現代の「ヴァルプルギスの夜祭り」について、どこで、どのように行われているかも紹介されています。
第5章 ヴァルプルギスの魔女
ヴァルプルギスの夜祭り
魔女どうやって空を飛ぶのか
「ファウスト」の魔女
魔女の聖地ハルツ山地とブロッケン山
魔女の聖地の紹介者-ゲーテとハイネ
第6章 ハルツ山地の魔女伝説3話
無邪気な魔女たち
邪悪な魔女たち
異教の復活に命をかける魔女
第7章 トレンドゥーラ伝説
巨人族の娘トレンドゥーラ
トレンドゥーラは魔女か
第8章 ヴェーヌス伝説
愛の女神ヴェーヌスは魔女か
魔女のすみか-ヘアゼルベルク
ワーグナーとハイネのヴェーヌス
第9章 イルゼシュタインの魔女
魔女とイルゼ姫 魔女と水の精
○初版の誤植については重版ですべて直っています。
西村佑子著 トラベルジャーナル社 1800円 2001年8月刊行
ドイツはどんな町も、どんな道も、どこを訪れても旅のしがいがあります。自然の美しいのがなによりですが、古い町に入れば、さまざまな様式の教会に歴史の重みを感じ、ドイツ独特の木組みの家がずらりと並ぶさまに、思わず感嘆の声をあげてしまいます。ドイツに一歩でも足を踏み入れた人なら、必ずやドイツファンになってしまうでしょう。
それでも旅人というのは、どこへ行っても、なにを見ても、もっとなにか面白いものはないかと欲張るものですし、ガイドブック通りに歩く旅ではもはや満足しないリピーターもいっぱいいます。この本はそんな旅行者にたっぷり満足していただけるように書いた一味ちがうドイツの旅案内です。
はじめに
第1章 風変わりな巡礼の旅
1.ミュンヘンの黒い聖母子像
2.ブラーケルの聖アンナ像
3.奇蹟のバラ
ヒルデスハイムの「千年のバラ」・ヴァルトブルクの「バラの奇蹟」
4.魔女の悪魔詣
第2章 魔女街道を歩く
1.魔女狩りの激しかった町
ヴュルツブルク・バンベルク・アイヒシュテット
2.魔女市長の家
3.魔女の十字架
4.魔女の塔
シュタイナオ・フルダ・ゲルンハオゼン・マールブルク
5.ドイツ最後の魔女
6.聖女ヴァルプルガ
7.ハンブルク魔女研究所
第3章 魔女の宴「ヴァルプルギスの夜」
1.「ヴァルプルギスの夜」伝説
2.ハルツ山地
3.ヴェアニゲローデ
4.リューベラント鍾乳洞
5.ブロッケン山
6.ヴルムベルク山
7.現代の「ヴァルプルギスの夜」
シールケ/ヘクセンタンツプラッツ/ゴスラー/ハーネンク レー/
ホテルのヴァルプルギス/バート・グルント
第4章 もう一つのメルヘン街道
1.ラインハルトの森
トレンドゥーラ伝説/トレンデルブルク城/ザバブル 城/ブラムブルク城/
ヴォルケンブルッフ/モルトカンマー/クルケンブルク城
2.ヴェーヌスの山
騎士タンホイザーとヴェーヌス/ヴェーヌスの洞窟
3.ホレおばさんの池
ホレおばさん伝説/ホレおばさんの故郷
4.イルゼの岩
イルゼ姫伝説/イルゼンシュタイン
5.魔女の踊り場
魔女ヴァーテリンデ/「賢い女」と薬草
第5章 古戦場めぐり
1.戦うゲルマン人
トイトブルクの森の戦い/ヘルマンの記念碑
2.聖地エクステルンシュタイネの謎
3.イルミンの柱
4.宣教師ボニファーツィウスの活躍
ボニファーツィウスの足跡/雷神トールの木/ボニファーツィウスの墓所
5.カール大帝とザクセン族の戦い
エーレスブルクの戦い/エーレスブルクのイルミンの柱/魔法の指輪とアーヘン
おわりに
参考文献
〈訂正のお願い〉
73頁については、読者の田中正彦さんからご指摘いただきました。ありがとうございました。
・5頁 目次 第4章 4 イルゼンシュタイン → イルゼシュタイン
173頁以下のこの章に出てくる「イルゼンシュタイン」はすべて「イルゼシュタイン」
・10頁 最後から3行目
処女懐胎→マリアを宿した母アンナの懐胎
・11頁 1行目
「無原罪の御宿り」→処女懐胎
・27、31、60頁
『グリム伝説集』→グリムの『ドイツ伝説集』
・73頁 5、8行目
34番→28番
「高さ二メートル・・・」→
「高さは七メートルほどですが、3人が手をつなげばかこめるほどの狭い塔です」
・162頁 7行目
1206→1207
・174頁 10行目
1007年→1077年
樋口雅一『まんがグリム童話』全6巻 講談社
「なるほど百科」 担当 西村佑子
第1巻
目次
1.灰かぶり 2.命の水 3.千枚皮 4.赤ずきん 5.青ひげ 6.ねずの木
7.まぬけなハンス 8.十二人兄弟
第2巻
目次
1.白雪姫 2.がちょう番の娘 3.名付け親の死神 4.ホレおばさん 5.ジメリの山
6.緑の上着を着た悪魔 7.森の家 8.兄と妹
以上のうち1つ紹介します。
「ホレおばさん」
ドイツには、ホレおばさんが羽布団を叩くと、その羽ぼこりが雪になるという伝説があります。ドイツ人にはとても有名な話で、雪が降ると、今でも「ホレおばさんがベットを直している」といっています。
ところが、ホレおばさんの仕事は雪を降らすだけではありません。糸紡ぎに精を出す勤勉な娘や心がけのいい子を見つけて、素晴らしい褒美を与え、家事を怠けている娘や悪さをする子には厳しい罰を与えます。
ホレおばさんは、ドイツ人でその名前を知らない人はいないくらい親しい伝説上の女性ですが、その正体はよくわかっていません。異次元の世界に住む 魔的な女性だとか、天上世界に住むゲルマンの女神だとか、あるいは地下に住む死の女神だともいわれています。
ホレおばさんの世界に行くには、井戸や池に飛びこまなければならないのですが、そこはホレおばさんが地上に雪を降らすところだというのですから、どういう構造になっているのか、私たちには想像もつかない不思議な世界です。
おばさんという呼び方にしても、『グリム童話』では、「年とった女」だと説明されていますが、若い女性だという説もあります。姿も、白髪で血走っ た目をした恐ろしい老婆だったり、森の池でよく水浴をするきれいな乙女だともいわれています。
ドイツには、ホレおばさんにゆかりの深い場所がいくつかあります。 美しいホレおばさんが水浴していた場所は、ヘッセン州のマイスナー・カウフンガー自然公園の中にあり、「ホレが池」と呼ばれています。また、チューリンゲン地方のヘーアゼルベルク山はホレおばさんの隠れ家だといわれています。
ここは、ホルンダー(ニワトコ)の木が自生する山として有名ですが、この木の名前はホレおばさんがつけたという言い伝えもあります。